平成6年度の研究計画は画像の合成を目的とした画像処理システムの開発が中心課題となった。このために、計算機、CCDカメラ、フレームメモリにより画像処理システムを構成し、金属顕微鏡により得られる画像の合成を試みた。当該年度に行った研究内容をまとめると次のようになる。 1)光学顕微鏡画像の合焦部分と非合焦部分を判別する複数のアルゴリズムについて定量的評価を行い、動画像の合成に最適なアルゴリズムを完成する。 2)顕微鏡の対物レンズを高速駆動している状態で画像を連続的に取り込み、実時間での画像合成を試みる。 以上の内容に関し、以下の成果が得られた。 1)対物レンズと観察対象の距離を逐次変えながら複数の画像を撮影し、画像処理によりそれらの画像から焦点の合った部分を抽出して1枚の画像に合成するという方法についての基礎的な研究を行い、対物レンズの駆動距離間隔×撮影枚数に相当する焦点深度をもった長焦点深度画像の合成に成功した。また、焦点の合った部分の抽出法法として、輝度分布の分散を求める方法、コントラストを求める方法、アダマ-ル変化による方法などを試み、演算時間が短いこと、合成の精度が高いことからアダマ-ル変換による方法が最も優れていることを明らかにした。また、本手法を実際の顕微鏡観察に用い、重ね合わされた複数の平板、ネジ山、標準粗さ試験片、リレーの接点などの通常の光学顕微鏡での観察が不可能な3次元形状物体を明瞭に観察できることを明らかにした。 2)連続的に画像を取り込み、実時間での画像合成処理を行い動画像を合成することに関し、対物レンズをアクチュエーションしている状態で画像を連続的に取り込み、実時間で合成する実験を試みた。その結果、計算機の処理能力との関係で、画像のサイズはやや小さくなるが、毎秒5フレーム程度の画像を合成し、モニター上に表示することができた。
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