研究概要 |
本研究では,近年議論されるようになったサブナノメートルの精度,分解能での加工,測定を数ミリメートル以上の範囲に拡大することを最終目的に,下記のことを行った. (1)粗微動サブナノメカニズムのモデル化と動的挙動の測定 粗微動サブナノメカニズムを試作,モデル化し,その動的挙動を明らかにした. (2)最適な位置制御方法の評価法 粗微動サブナノメカニズムに最適な制御方法を明らかにするために,10mmステップ入力に対する応答波形についてコントローラの設計基準を定め,その条件を満たすコントローラが,ステップ高さ,質量の変化等に対してどの程度ロバスト性を示すか検討し,評価することとした. (3)サブナノメートル位置制御系の検討 以下の3種類の制御法に関し,粗微動サブナノメカニズムへの有効性を検討し,次の知見を得た. (A)PID制御法に関し,粗動機構用にPI-Dコントローラを,微動機構用にPIコントローラを用いた.この結果,設計基準を満たす応答波形が得られ,ステップ高さの変化に対し高いロバスト性が示された. (B)ファジイ制御法に関し,粗動機構用に比例,積分要素を,微動機構用に積分要素のみを有するコントローラを設計した.その結果,PID制御法に比べ,質量変化にロバストなコントローラが実現できた. (C)ニューラルネットワーク制御に関し,偏差のみを入力とする三層構造のコントローラを設計した.この時全ての要素を学習させると,目標位置近傍で粗動機構が動作し,安定した位置決めができず,学習する要素を制御して,比較的安定した位置決め結果を得た. (D)最適制御法に関し,コントローラの形式等を変えて数種類のシミュレーションと実験を行った.その中にはシミュレーションでは,比較的適切に動作するものもあったが,実験では発振してしまった.今後はこの原因を究明していく必要がある.
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