研究概要 |
本研究は,コンカレントエンジニアリングを実現するために実際的なコンピュータによる支援が不可欠であるとの考えに立ち,具体的な研究課題として「統合的な対象モデリング」と「多領域最適化手法」を取り上げ,コンカレントエンジニアリングのための実際的な方法論を確立することを目的としたものである。得られた成果は以下のとおりである。 第1の課題に対しては,機器配置や配管から構成される機械製品の設計のための対象モデリングを取り上げた。このような設計では,本体を構成するパッケージ内に各装置や部品を配置して,配管を施すなどの設計処理が行われるが,このためにはコストや性能などの多様な設計目標を統合的に扱う必要がある。本研究では,具体的な方法として,形態モデル,形状モデル,シミュレーションモデルなどから成る階層的なモデリング手法を構成し,設計処理と各設計目標の評価などを統合的に扱えるようにした。モデルの構成はオブジェクト指向に基づく分散型とし,柔軟な設計処理を可能とした。さらに実際の設計事例として空調機の設計を取り上げ,得られたモデルの有効性を確認した. 第2の課題には,リンク機構の設計課題と自動車駆動系の設計課題を取り上げ,多領域最適化を実施した。リンク機構の設計は,機構形態の決定と部材の強度評価を統合化する典型的な多領域最適化問題であり,オブジェクト指向に基づく対象モデリングの方法を発展させて,多領域最適化が実施できるようにした。具体的な事例として油圧ショベルの設計に適用し,得られた手法の有効性を検証した。また,自動車の駆動系の設計最適化については,トルクコンバータの翼形状の設計問題を取り上げ,自動車の走行性能や燃費などの評価項目を総合的に最適化するための多目的最適化手法を開発し,手法の有効性を検証した。以上の研究成果はより広範囲の設計対象についても適用が可能である。
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