研究概要 |
本研究は,相移転流動制御による高品質固体球殻の連続生成に関する研究である。すなわち,スーパーコンピュータを用いた数値解析と種々の液体材料を用いた実験を行い,その連続生成に及ぼす制御パラメータの影響を定量的に明らかにすることにより,実現が困難であった,数ミリ直径の固体球殻の連続生成が可能にするとともに,従来不明であった相移転を伴う固液共存溶融体の熱流動現象の解明に直接寄与するものである。とくに,本年度は,申請者らの発明した気-液-液系固体球殻連続生成装置(液槽内に満たされた不混和二液層の底部から気体を噴出し,下層液体から成る中空液滴を連続生成して,その上昇運動中に凝固させて,固体球殻を得る装置)の内部液層の熱対流運動を数値解析と実験の両面から明らかにし,装置内液層温度を精密制御することに成功した。その研究成果を基に,低融点はんだを用いた金属球殻の連続生成に初めて成功するとともに,装置内部の熱流動状態と固体球殻の粒径,粒径分布,球形度.肉厚分布ならびに製造頻度などとの関係を確立統計的に分析・評価し,実用に供する基礎設計資料を蓄積した。また,生成装置内部を上昇する中空液滴の局所速度および界面波動を予測する理論モデルを構築し,スーパーコンピュータを用いた具体的な数値解析と種々の液体材料を用いた実験との比較からこれらの有用性を確認した。これらによって,個々の中空液滴の挙動およびその界面波動が装置性能全般に及ぼす影響を詳細に検討することが可能となった。近い将来,さらなる装置の高性能化および小型化に向けて,これまでの研究成果を考慮した装置の設計法を再構築する予定である。また,固体球殻の幾何形状と直接関連する中空液滴界面の移動境界問題の数値解法の開発にも既に着手しており,中空液滴界面の流動特性をさらに明確にして,高品質な固体球殻の連続生成に応用したいと考えている。
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