研究概要 |
理論解析に関しては,まず気泡が溶存することによる流体の圧縮性が旋回キャビテーションに及ぼす影響を調べるために,流体を等温な均質な気液二相流としてセミ・アクチュエータディスク法を用いて線形解析を行った.その結果,圧縮性により旋回キャビテーションの発生域が狭くなり,さらに圧縮性が強くなるとこれまでの解析や実験で見られなかった伝播速度比の高い旋回キャビテーションが存在し得ることが分かった. 次に,これまでの旋回キャビテーションの解析結果を解釈上必要である非定常キャビテーション特性を調べるために,後縁閉鎖形でキャビティ長の変化し得る部分キャビテーションを対象とした線形特異点解析法を提示し,平板翼列に対して解析を行った.その結果,入口流れの変化に対するキャビテーションの非定常応答がキャビテーション係数と迎え角の比の関数であることが解析的に判明し,翼列のソリディティが0.75程度以上になると,半無限翼列での結果とほぼ一致することが分かった. インデューサを用いた実験的研究ではケーシングにおける非定常圧力の計測により,旋回キャビテーション発生下の翼まわりの圧力場を詳細に調べた.これにより低流量時と高流量時では旋回キャビテーションの伝播の様子が異なることが明らかになった.また,クリアランス流れのモデル実験装置を用いてティップ渦形成過程に発生するキャビテーションの挙動観察を行い,キャビティの移動特性を定量的に示した.一方,インデューサの流れをモデル化するために初年度に購入した単独翼装置の実験ではティップクリアランスが大きくなるほど顕著なティップキャビテーションが発生し,それにより翼面キャビテーションの発生領域が抑えられることが高速度ビデオ撮影によりわかった.また,キャビティ長さが翼弦長とほぼ等しくなる条件下では非定常キャビテーションが発生することを明らかにした.
|