研究概要 |
本補助金により,3種類の実験,5種類の理論解析を行い,大きな成果が得られた. 実験に関しては,先ず実機寸法のH II用エンジンLE-7の液体酸素用インデューサとキャビテーションタンネルを製作し,広い範囲の運転条件下で旋回キャビテーション,キャビテーションサージを含む不安定現象を観察し,その発生条件を明確にした.また,これらの現象の発生下でケーシング上の圧力変動を精細に計測し,旋回キャビテーションに関してキャビティの伝播の様子を調べた. 旋回キャビテーションに重要な役割を果たす翼端キャビテーションの非定常特性を明らかにする基礎実験として,翼端もれ流れのキャビテーションを二次元,非定常流れのキャビテーションとしてとらえ,実験およびシミュレーションを行った.その結果,もれ渦中に生じるキャビテーションの体積は,体積変動を考慮した流れ解析でよくシミュレートできることがわかった.今後この方法に基づき,三次元翼端もれ流れキャビテーションの非定常特性を予測検討する予定である. 翼端キャビテーションと翼面キャビテーションの関係および非定常特性を明らかにするために,振動翼試験装置を製作し,予備実験を行った.現在はまだ翼を固定した状態でのキャビテーションの観察が完了しただけであるが,従来認められていない高周波数の振動が観察されており,非定常特性のみならずより広い立場から実験を遂行する予定である. 旋回キャビテーションに関し多くの理論解析を行った.先ず非線型解析を行い振幅を決める要因が,圧力低下によるキャビテーションコンプライアンスの増大にあることを明らかにした.次に平行平板間および環状翼列の場合の解析を行い,スパン方向の最低次モードに対しては三次元性の影響は小さく,二次元解析が有効であることがわかった.以上の解析はすべて翼列をアクチュエータディスクとして扱いキャビテーションの影響をマスフローゲインファクタとキャビテーションコンプライアンスで表現しているが,この他に有限ピッチ翼列解析で流れとキャビティの関係を直接調べた.その結果基本的には二次元アクチュエータディスク解析の結果を支持する結果が得られている. 以上のより精細な解析はすべて二次元解析を支持するものであるが,この他に高次モードその他実験的に十分に明らかでないモードも発見された.これらの点のより詳細は今後の課題としたい.
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