温度および濃度を異にする2つの液体が、容器内で安定に密度成層を形成している状態に対して、容器壁面を通しての入熱があると、2液層内で自然対流が発生し、2液層境界面を通して熱・物質移動が生じ、最終的には両液層の密度差が低減することによって両層が急激に混合するにいたる。本研究は、このような現象、いわゆるロールオーバー(反転)現象を引き起こす基本的メカニズムとして重要と考えられる、2液層界面での熱・物質移動の解明を目的とする。具体的には、密度成層化した2液層の入った容器の壁面を加熱した場合に生ずる流動および熱・物質移動について、とくに2液層間の界面付近で生ずる現象の観察・解明に重点をおいて、数値解析および可視化実験を行った。 その結果、数値計算では、加熱開始直後から2液層内にそれぞれ別個の自然対流(ロールセル状)が発生するが、下層壁面に沿って上昇する境界層流れが、しだいに上層に侵入し、時間とともにその度合いが強まり、やがて上層表面(自由液面)に到達するようになると、急激に両層液が混合し始めることがわかった。 一方、エチルアルコール水溶液あるいは食塩水を用いた可視化実験においても、上述のものと同様の現象が観測され、密度成層化した2液層の混合に当たって、下層液の壁面に沿う流れの上層への侵入が重要なメカニズムの一つであることが確認された。 また、これとは別に、レーザーホログラフィ干渉法を用いて2液層界面付近の屈折率分布を可視化することによって、界面を通しての熱および物質移動量を求めた。その結果、熱流束および物質流束と両液層間の温度差・濃度差の関係が求められた。
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