パワーグラスプとはロボットの多指ハンドによる物体の把握形態の一つであり、指の先端部だけでなく中間リンクや掌を含めた多点同時接触によって、物体を拘束して把握する形態をいう。1988年にMITのK. Salisburyがこのような把握の重要性を指摘して以来、いくつかの研究がなされてきた。パワーグラスプではロボットハンドがトルク一定で物体を把握していても、ある範囲の外乱力に対して自動的に接触点での力を調節して把握を保とうとするロバスト性が機構的に存在する。一方従来の指先把握では、関節トルクを変化させることによってしか外乱力に抗することができない。パワーグラスプの機構的なロバスト性は突発的に加わる外乱力に対してフィードバック等の遅れなしに瞬時に対応できる点で、指先把握より優れており、その応用が望まれてきていた。 本研究では (1)パワーグラスプにおいて許される外力の集合を評価してパワーグラスプを計画すること、 (2)指の多点同時接触において接触点と接触力を指の関節トルクと各指の根本に取り付けられた6軸力覚センサで計測する方法、 (3)パワーグラスプを実際に多指ロボットハンドに行わせる制御によって外乱に対するロバスト性を実験的に検証すること などに関して成果を上げることができた。
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