研究概要 |
蝶の飛行を高速度カメラで撮影して,飛行の特徴を調べた.昆虫の飛行と航空機の飛行は流体力学上の異なるメカニズムによるもので,航空機はレイノルズ数の大きな領域で支配的な揚力を利用しているのに対して,昆虫は羽ばたくことによる抗力を主に利用しているといわれている.高速度カメラによる解析では蝶の羽ばたきのメカニズムを筋肉による翼の制御のレベルでは解析できないが,翅の弾性的な変形による,アップストロークとダウンストロークの非対称な動きによって,鉛直上向き方向の力が生まれていることがわかった. 次に,弾性を利用した受動的なストロークの制御によって上昇力が得られることを蝶のサイズの実験装置を検証した.翼を大気中および真空中で羽ばたかせ,力の差をとって空気から受ける力とした.その結果によると,試作した翼が空気から受ける力は約0.5gであることが測定された.蝶の質量が約1gであるので,蝶の翼に比べてこの翼の性能は劣るが,人工蝶の質量を軽量化できれば飛行に足る力になりうる.これらの結果をふまえて,実際に飛行できるメカニズムを試作して,シンセシスを通して,本研究の解析および従来の解析の妥当性あるいは欠陥を調べようとしている.これと並行して,寸法が約1mmの羽ばたきメカニズムをシリコン技術を導入して試作している.
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