研究課題
一般研究(B)
超伝導撚線の電流転流特性と安定性に関する既存データの収集を行い、現在までの研究で明らかになったことと今後の研究が必要な点について検討した。核融合実験用等に用いられるのケーブルインコンジット導体では、撚線の乱れによる素線毎のイングクタンスの相違により、素線真の電流分布に大きな差が生じることが実験的及び解析的に明らかにされてきた。平成6年度には2本撚線について電流転流特性及び安定性の実験を行い、素線絶縁をしない撚線では、クエンチした素線からもう一方の素線への電流の転流速度が熱の伝達に比べ十分に速く、また、過渡熱伝達の効果から、撚線の安定性が同じ断面積のモノリス線に比べて向上すること等が明らかになった。平成7年度には、撚線本数を3本とし、3本の撚線の初期電流分布が、安定性に及ぼす影響について実験を行った。その結果、安定性が、撚線間の初期電流分布によって一意的にきまるのではなく、外部磁場条件や通電電流値によって、安定性が最大となる初期電流分布が異なることが明らかになった。同様な結果は、素線間の接触抵抗を変化させた超伝導成型型撚線の実験でも得られ、接触抵抗が低く電流転流し易い導体の安定性が接触抵抗が大きく電流転流し難い導体の安定性よりもいつも高くなるわけではなく、外部磁場、通電電流、ヒーター入熱の時間幅などに依存して安定性の優劣が変化することが明かとなった。上記の実験結果は、超伝導撚線の安定性が、単に撚線間の電流転流特性のみできまるのではなく、安定性マージン、熱的な接触条件や冷却条件などの要因で変化することを示しており、安定な超伝導コイルとするためには、コイル中での使用条件に合わせた超伝導撚線の設計が必要であることが明かとなった。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)