研究概要 |
従来のノイマン型マイクロプロセッサとは構造がまったく異なる,“演算ユニット・メモリ一体分布型ニューハードウェア"により,しなやかで,かつ瞬時応答性を兼ね備えた知能集積回路を実現するための要素技術に関して研究を実施した。“やわらかい論理回路"(Flexware)からなる論理演算機能にメモリ機能を付与したユニットを分散配置し,機能的にネットワークを構成することにより,ボトルネックの無い理想的なデータフローが実現でき,瞬時応答性が実現できる。実時間で機能可能なFlexwareは,高機能4端子デバイスのνMOSを用いることにより,非常に少ない素子数が実現できた。超高速のチップ動作のためのセルフタイミング機構も,νMOSにより簡単に実現できた。クロック制御のフローティングゲートスイッチを付加したνMOS回路形式により,演算精度と信頼性が向上した。さらに,フローティングゲートレベルでの減算機構が実現できた。この技術は,スイッチトキャパイタ技術と,νMOS技術を融合させた新しい回路技術である。センスアンプ技術を応用することにより,νMOS回路の低消費電力化が実現できた。以上の技術を集結することにより,極低消費電力のA/D変換器と非常に高速な乗算器を実現した。試作した4ビット一括加算A/D変換器は,6MS/sの変換速度で1.2mWしか消費せず,従来形式の1/10以下の低消費電力化が実現された。また,一括加算原理を用いた64ビット乗算器は,3nsのスループットで動作可能であることがシミュレーションにより明らかになった。また,これらの高機能νMOS回路を実現するために必要なデバイス製造プロセスの精度に関して考察し,要求精度として提示した。50値多重化を実現するためには,主要デバイスパラメータを数パーセントの精度に保たなければならないことが明らかになった。
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