研究概要 |
本研究は、固体表面の光触媒機能を利用して、金属および金属酸化膜の超薄膜構造を形成することを目的としている。励起光としては,紫外から真空紫外からまでの光を用いる。 本年度は、まず,半導体、絶縁体、金属表面上の有機金属光触媒反応実験のための,赤外分光・光電子分光装置等を備えた複合表面解析装置の製作整備を行った。この装置は(1)超高真空槽(2)真空排気系(3)超高真空精密マニピュレータ(4)ガス供給系(5)赤外光学系(6)光電子分光系(7)ガス分折系(8)紫外線ランプよりなる。本研究では、半導体、絶縁体、および金属表面上での有機金属の分解反応を赤外分光法で診断するが、半導体表面の場合は多重内部反射分光法を用いる。この多重内部反射測定のための赤外分光測定系の調整、整備を行い,半導体の試料表面の赤外吸収スペクトルを超高真空中で40K〜300Kの温度範囲で測定することに成功した。現在,半導体基板表面に炭素系ガスを導入し,ガスの吸着状態の温度依存性を調べる実験を行っている。 一方,この複合表面解析装置を東京大学物性研究所軌道放射物性研究施設のシンクロトロン放射光ビームラインに設置し,有機金属ガスを基板表面に吸着させ、紫外光を基板表面に照射しながら有機金属分子の光分解反応を調べた。SiCの原料となるテトラメチルシラン(TMS)の真空紫外光による光分解反応を調べた結果,TMSのメチル基の光分解・重合によってアモルファスSiCができることが確かめられた。また,真空紫外光ではC-H結合がSi-C結合に較べて切断され易いことが分かった。ダイヤモンドの原料となるアダマンタンについても同様の反応実験を行った結果,C-H結合が切れるが,C-C結合は切断されないことが分かった。今後半導体薄膜の上に金属薄膜を堆積することを試みる。
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