研究概要 |
本研究は、固体表面の光触媒機能を利用して、金属および金属酸化膜の超薄膜構造を形成することを目的としている。励起光としては,紫外から真空紫外からまでの光を用いる。 本年度は、前年度に製作した,半導体、絶縁体、金属表面上の有機金属光触媒反応実験のための,複合表面解析装置を用いて,主に、広バンドギャップ半導体SiCの原料となるテトラメチルシラン(TMS)の真空紫外光による光分解反応過程と、GaAs半導体基板上の金属薄膜の堆積過程を調べた。 その結果、TMS光分解反応過程については、前年度の予備的実験で明らかになっていた、TMSのメチル基の光分解・重合によってアモルファスSiCができる実験結果を再確認するとともに、赤外吸収その場解析装置を用いてTMSのC-H結合の分解過程を明らかにした。TMSの中のC-H結合は真空紫外光によって直接分解する過程と、光照射によって生成された活性種がTMSと反応することによっておこる二次的過程があることが解った。 GaAs半導体基板上の金属薄膜の堆積過程については、GaAs基板上に金、銀、アルミニウム、インジウムを堆積したときに起こる金属・半導体界面反応過程を放射光光電子分光法を用いて調べた。金属の種類によって界面反応は大きく異なることが分かった。また、初期GaAs表面を酸処理するか硫黄処理するかによっても界面反応が異なることが分かった。酸処理すると初期表面には薄い酸化膜が存在し、その酸化膜表面に金属を堆積すると酸化膜と金属、基板と金属の間で反応が起こるが、硫黄処理すると表面の硫黄が界面反応を抑制して金属の内部拡散を押さえることが分かった。この実験結果は金属超薄膜構造を形成する上で重要である。次年度は、硫黄層を用いた界面反応抑制法についても更に詳細に研究を行う予定である。
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