研究概要 |
磁性多層膜における交換結合にはいろいろなタイプがあり,本研究ではそれぞれの研究分担者が独自の角度からその基礎的側面と応用に関して検討を進めている。 まず,ここ数年,世界的に注目を集めてきた巨大磁気抵抗効果に関しては,工学的観点から磁界感度を向上させる検討を材料組成,膜構成,成膜後の熱処理などのパラメータを系統的に変化させて行った。その結果,Ni_<14>Fe_<13>Co_<73>/Cuという組成をもった多層膜において非常に高い磁界感度が得られた。また、従来より我々が開発したアモルファス軟磁性材料であるCoFeBを多層膜の磁性として用いたCoFeB/Cu/CoFeBサンドイッチ膜がやはり巨大磁気抵抗効果を示し、かつ磁界感度も非常に高いことを見い出した。アモルファス材料を用いても巨大磁気抵抗効果が発現することは,その理論上からも議論を呼び,たいへん興味深い結果であるといえる。 巨大磁気抵抗効果は,間接的な交換結合を利用したものであるが,磁性槽同士を直接交換力で結合した多層膜においても,以下のように興味深い結果が得られた。 我々は,超高密度光磁気記録媒体としてNdを含むアモルファス材料の研究をこの数年間行ってきたが,本研究では,NdTb/FeCoおよびNdDy/FeCo多層膜をスパッタリングにより作製し,その磁気および磁気光学特性を評価したところ,従来の材料に比べより大きな垂直磁気異方性が誘導され,磁気特性が大幅に改善された。また、磁気光学Kerr回転角も将来の短波長域において現在実用化されているTbFeCo系の材料より50%以上も改善された。さらにEXAFS分光法を用いて微細構造と磁気異方性の相関についても知見を得た。
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