研究概要 |
当該年度はPb系強誘電体超格子薄膜の実現を目指し、MOCVD法によるPb(Zr,Ti)O_3(PZT)、(Pb,La)(Zr,Ti)O_3(PLZT)薄膜の作製とそれらの超薄膜、とりわけ数nmから100nm程度ののPbTiO_3薄膜の成長過程を調べるための方法の確立を図った。MOCVDE法での薄膜成長の「その場」観察は非常に難しいため、堆積時間を変化させたPbTiO_3薄膜の成長過程を原子間力顕微鏡及びエネルギー分散型全反射X線回折法により評価した。 原子間力顕微鏡の力一定モードによる像の膜厚方向の変位及び累積度数分布の測定より、Pt/MgO基板上のPbTiO_3膜の成長初期の段階では約3-9nmの高さのアイランド構造が徐々に成長していき10-20nm程度の膜厚になるまでには三次元成長と二次元成長が混在した成長形態をとることが観察された。またエネルギー分散型全反射X線回析法をPbTiO_3及びPZT薄膜堆積機構の解明に初めて用い、数nmから100nm程度の膜厚を有するPbTiO_3薄膜の面内配向性、エピタキシャル関係、格子定数等の測定に初めて成功した。これより、膜厚が非常に薄いときはC軸の格子定数が縮み、厚くなるにつれの軸ドメインの形成により歪みが緩和されていくことが初めて解った。また原子間力顕微鏡の二次元電流分布像の観察により、PZT薄膜表面では粒界部分を電流が流れることを見いだし、超薄膜の電流伝導機構の解明に糸口を与えた。上記の2種類の薄膜解析法が超薄膜にも適用可能であることを示したが、とりわけ、全反射X線回析装置はCVD装置への組み込みが可能であるため、強誘電体超格子薄膜のその場観察への展開が期待されることが判明した。
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