高密度のガスパルスプラズマの発生について、そのメカニズムの解明と短パルス化学分子線成長への応用について、それぞれ個別に実験を行い、つぎのことを明らかにした。 (1)小キャビティのマイクロ波放電室にマイクロ波電力を供給しておきそこにガスを短パルスとして供給すると、発生するプラズマの強度がガスパルスの導入直後に大きく増大する(ガスパルスプラズマ)。ヘリウムプラズマの発光を調べると、発生するパルスプラズマは定常プラズマとはちがった発光特性を示し、ラジカル分布などのプラズマ特性が異なっている。プラズマ増大のメカニズムは、原料ガス分子と励起分子との衝突の減少に基づいて起こる荷電粒子の増大とマイクロ波吸収の増大の相互促進作用によると推定される。 (2)有機金属を短パルスにすることにより「表面反応の位相をそろえる」短パルス化学分子線成長に励起パルス(この場合はプラズマパルス)を組み合わせると、個別の表面素反応の解明が可能となる。 (3)有機金属のDMAlHをAlの原料とするAlAsの選択成長において、プラズマの照射によって成長の選択性を消失させることができる。これはマスク膜表面がプラズマ照射によって帯電し、DMAlH分子のマスク膜上での分解が起こるようになるためである。この帯電による分解の生起は有機金属全般の特質ではなく、DMAlH分子のもつAl-H結合が電荷に敏感であることが推定される。
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