研究概要 |
マイクロマシンの実用化に向けて不可欠となるのが,そのアクチュエータの研究である。マイクロマシン用のアクチュエータとしてTiNi合金(形状記憶合金:SMA(Shape Memory Alloy))は,発生力/重量,発生力/体積が大きい,マイクロ化により表面積/体積が大きくなり応答が速くなる,スパッタ法やエッチングなどのIC加工技術の応用により微細加工が容易である,等の長所がある。RSMA(Reversible SMA)をマイクロマシンに適用する利点は,曲げ変形を利用した場合にはアクチュエーター,ジョイント,フレームの三つの役割を一つの要素で果たすことができること。また,一方向性のSMAのようにバイアス機構を必要としないことがある。そこで近年,TiNi合金を二方向性形状記憶効果を持つRSMA(Reversible SMA)としてマイクロマシンに応用する研究が行われている。しかしスパッタ法による成膜では膜組織をアモルファス構造となり,形状記憶させるには結晶化のための熱処理が必要となる。SiO_2/Si基板上にTiNi合金をスパッタ成膜し,形状記憶化した例では熱処理の際のTiNi薄膜とSiO_2膜との剥離が問題となった。 そこで本研究では電流加熱による結晶化熱処理法を提案した。この方法は通電によるジュール熱を利用することにより,局部的なTiNi薄膜部のみの加熱が可能である。まずTiNi薄膜単体にこの方法を適用し,また形状記憶化熱処理を行ったところ,従来の電気炉による結晶化熱処理で得たRSMA薄膜よりも,良い二方向性形状記憶効果を示した。さらにSi基板上のTiNi薄膜への応用では,TiNi薄膜とSiO_2膜との剥離は認められなかった。これにより本熱処理法の有効性が確認できた。
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