本研究課題が掲げる極微電変換素子の機能要素である磁性金属多層膜における極微3次元電流路形成のための微細加工技術と、より高い磁電変換効率を得るための磁性多層膜の界面処理に関して以下のような成果を得た。 1.本研究課題で購入した高周波電極付き超高真空排気装置を既存の多元電子ビーム蒸着装置に組み込み、多層膜の界面状態を酸素及びアルゴンの高周波プラズマ照射により制御しうる新しい成膜装置を構成した。磁性薄膜の結晶性及び磁気異方性を精密に制御するために温度制御機構付きランプアニール装置及び外部磁界印加装置を自作し本成膜装置に装備した。 2.上記装置を用いて作製したNi-Fe/Cu/Co3層膜にイオンミリング装置によるドライエッチング加工を施して作製した数10μm幅のストリップラインにおいて約2%(印加磁界10 Oe)のスピン依存型電子散乱に起因する磁気抵抗変化率(室温)を得た。 3.強磁性トンネル効果を利用した極微磁電変換素子の構成に関し、磁性層/誘電体/磁性層からなる多層膜の膜垂直方向に電流を印加するための3次元電流路の作成技術を確立した。トンネル障壁の形成法として、高周波酸素プラズマによるAl膜の表面酸化を試み、接合部抵抗の各プラズマパラメータに対する依存性を明らかにした。 4.ミクロンオーダの軟磁性薄膜パタンの磁化機構についてマイクロマグネティクスに基づく計算機シミュレーションを行い、外部磁界による磁化反転過程において、渦流状の磁化分布を経ること、また外部磁界と直交する向きにバイアス磁界を印加することにより磁化過程が一斉磁化反転モードへと移行すること等を明らかにした。
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