研究概要 |
本年度は、超長距離光伝送路の中点に、“光位相共役デバイス"を設置することにより、分散歪のみならず非線形歪をほぼ完全に補償する新しい方式に関し、以下の研究を行った。 (1)システム性能の解析とシステムの最適設計 分散とKerr効果の存在下における光ファイバ中の光波の伝搬は、非線形シュレ-ディンガー方程式によって記述される。この方程式を数値解析することにより伝送信号波形歪を求めるシミュレータを開発した。これを用いて、伝送路の中点で位相共役を行った場合、波形歪の補償度が、信号光パワー、光増幅器間隔、光ファイバの分散に対して、どのように依存するかを数値解析により明らかにした。歪補償効率を制限するのは、光増幅中継系における周期的な光パワー変動に起因する、サイドバンド変調不安定であることを見いだし、この結果に基づき、システムの最適設計を行った。 (2)位相共役デバイスの設計・試作 パワー10mWの1.55μm帯半導体レーザをポンプ光とし、長さ10kmの零分散ファイバにおける四光波混合を用いて、変換効率5%程度の位相共役光の発生に成功した。また、変換効率を最大にするための設計理論を確立した。 (3)周回ループを用いた超長距離光伝送シミュレータの開発 周回ループを用いた長距離光伝送シミュレータを試作した。最大10,000kmの伝送後の光スペクトルを観測することに成功した。この結果、長距離伝送路における変調不安定現象の分散依存性が明らかになった。また、サイドバンド変調不安定の存在を、を世界ではじめて実験的に示した。
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