研究概要 |
光増幅中継系では、中継器間におけるファイバの損失が増幅器の利得により補償されるので、再生中継を行うことなく1,000kmを越える伝送距離が実現できる。しかし一方で、信号光パワーが光ファイバ全長にわたって高いレベルに維持されるため、光ファイバの3次非線形光学効果(カー効果)が無視できなくなる。このため、光ファイバの非線形性と群速度分散の相互作用によって光パラメトリット利得が生じ、伝送波形歪や光増幅器雑音がパラメトリック増幅されることによるS/N比の低下がもたらされる。筆者らはこれらの問題を解決するために、光増幅中継伝送路の中点で信号光の位相共役(複素共役)をとる位相共役光通信システムを提案し、その研究を進めてきたが、本年度は歪補償効率を高めるためのシステム設計理論について以下の成果を得た。 まず、本システムの性能を制限する要因について検討を行った。この結果、光増幅中継系における光パワーの周期的変動が原因となるサイドバンド変調不安定によって生じた伝送波形歪みは、位相共役によっても補償することができないことが示された。次に、サイドバンド変調不安定の存在を検証するための実験を行った。長距離伝送時の信号および増幅器雑音スペクトルの変化を、周囲ループを用いた実験系で測定した。スペクトルの測定により、伝送距離が5,000kmを越えるあたりからサイドバンド変調不安定現象に基づく光パラメトリック利得によって光増幅器雑音が選択的に増幅される現象が見いだされた。 本システムの歪み補償効率を高めるためには、システム設計によりサイドバンド変調不安定の影響を回避する必要がある。このためには、光増幅中継器間隔および伝送用ファイバの分散設計が重要であることを指摘し、設計のガイドラインを示した。
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