研究概要 |
光増幅中継系では、中継器間におけるファイバの損失が増幅器の利得により補償されるので、再生中継を行うことなく1,000kmを越える伝送距離が実現できる。しかし一方で、信号光パワーが光ファイバ全長にわたって高いレベルに維持されるため、光ファイバの3次非線形光学効果(カー効果)が無視できなくなる。このため、光ファイバの非線形性と群速度分散の相互作用によって光パラメトリック利得が生じ、伝送波形歪や光増幅器雑音がパラメトリック増幅されることによるS/N比の低下がもたらされる。本研究ではこれらの問題を解決するために、光増幅中継伝送路の中点で信号光の位相共役(複素共役)をとる位相共役光通信システムを提案し、その実現の可能性を検討した。主要な成果を以下に示す。 (1)位相共役による歪補償効率を高めるためのシステム設計理論を確立した。まず本システムの性能を制限する要因について検討を行い、光増幅中継系における光パワーの周期的変動が原因となるサイドバンド変調不安定によって生じた伝送波形歪みは、位相共役によっても補償することができないことを示した。サイドバンド変調不安定の影響を回避するためには、光増幅中継器間隔および伝送用ファイバの分散設計が重要であることを指摘し、設計のガイドラインを示した。 (2)光位相共役を実現する方法として、分散シフト光ファイバを用いる方法を検討し、効率を最大にするデバイス設計理論を確立した。実際にデバイスを試作し数%の変換効率を得た。 (3)光位相共役を実現する方法として、半導体光増幅器を用いる方法を検討した。離調周波数200GHz程度で100%を越える変換効率を達成し、この素子をシステムに導入することにより光ファイバの非線形効果を抑圧することに成功した。
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