多数の伝送路間の結合問題を系統的に取り扱うために、結合モード理論を基にした新しい近似解法を提案するとともに、それらを応用して、多層多導体線路系、結合光導波路系の解析を行い、以下の成果及び知見を得た。 1.多層多導体線路系に対して、一般化された相反定理を基にした結合モード理論と特異摂動論を基にした結合モード理論を定式化し、スペクトル領域ガラーキン法を援用した数値計算の手続きを与えた。 2.同一面上に配置された対称マイクロストリップ線路、非対称マイクロストリップ線路、多重マイクロストリップ線路、及び異なった面上に配置された結合マイクロストリップ線路の分散特性の解析を行い、提案した結合モード理論がいずれも精度の良い近似解法であることを示した。 3.非線形光導波路系に対して、特異摂動論を基にした結合モード理論がベクトル・モードに適用できるように理論を拡張した。その結果を用いて、非線形光ファイバカプラの解析を行い、光スイッチングにおける偏波効果を明らかにした。 4.光波長分離デバイスとして、グレーティングが二重に装荷された三つの光導波路から成る方向性結合器を提案し、結合モード理論による解析の結果、従来のGrating-Assisted Two-Waveguide Couplerに比べて非常に鋭い波長選択性が得られることを明らかにした。 5.光導波路系に対する結合モード理論を用いて、三つの非線形光導波路から成る対称非線形方向性結合器の入出力特性を解析し、外側の二つの導波路間のスイッチング特性が中央の導波路に入射させた微弱な制御光の位相によって制御できることを明らかにした。
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