当研究課題に対し、平成6年度で実施した内容およびそれらに関する研究成果の概要を述べる。なお、以下の(1)および(2)については自作の電解セルを用いた実験、(3)に関しては鉄筋を埋め込んだモルタル供試体を作成し、(1)鉄筋を陰極とする(内部電極法)、あるいは(2)両極とも外部に設置する(外部電極法)方法で、それぞれ通電を施し、その相違点についての検討結果をまとめたものである。 (1)ペースト・骨材界面がイオンの移動現象に及ぼす影響:単位細骨材量(S/C)を変化させたモルタル供試体、および単位粗骨材量(G/C)を変えたコンクリート供試体について、ペースト・骨材界面が各種イオン(Cl^-、Na^+、K^+)の移動現象に及ぼす影響についての検討を行った。その結果、(1)S/C、G/Cが小さい硬化体ほどイオンの移動を抑制すること、(2)これらのイオンの移動の抑制が、ペースト・骨材界面の影響によるものであると考えられる、等が明らかとなった。 (2)硬化体の材齢がイオンの移動現象に及ぼす影響:通電時に、コンクリート中に含まれるイオン量を硬化体の材齢としてとらえ、これが各種イオンの移動現象に及ぼす影響について検討を行った。その結果、(1)Na^+およびK^+については、材齢の長い硬化体ほどその溶出量が小さくなること、(2)Cl^-の移動については、材齢の影響をあまり受けないこと、(3)若材齢時(7日)に硬化体の細孔構造は、通電を施すことにより緻密になる、等のことが明らかとなった。 (3)アルカリイオンの移動現象に及ぼす影響:パイレックスガラス細骨材を用いたモルタル硬化体の、外部電極法(両電極とも外部に設置する方法)よる、通電によるNa^+およびK^+の移動挙動についての検討を行った。その結果、(1)Na^+およびK^+を電気的に移動させることにより、アルカリ骨材反応が抑制される可能性があるが、これらのイオンが移動しない0.1A/m^2程度では、アルカリ骨材反応による膨張を助長してしまう可能性がある、(2)外部溶液として水酸化リチウム(LiOH)を用いた場合、アルカリ骨材反応による硬化体表面のひび割れが抑制される。等のことが明らかとなった。
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