研究概要 |
吊橋,斜張橋の動的設計に必要な重要パラメータの一つにモード減衰比があるが,理論的推定が難しいことから,その値を経験的に仮定しているのが現状である。一方,設計で仮定されたパラメータの妥当性を検証するために振動実験を行うことが多く,減衰に関するデータが蓄積されつつある。そこで,多様な構造形態が可能な吊橋,斜張橋の振動減衰特性を減衰データベースを基に比較考慮し,斜張橋の減衰解析を行って理論的減衰評価法の妥当性を検討した。 今年度の具体的な研究実績は以下のとおりである。 1.文献調査によって拡充した吊橋・斜張橋の減衰データベースを基に,固有振動数-モード減衰関係,平均モード減衰-スパン長関係等を求めて比較検討した。その結果,斜張橋での減衰モード依存性が明確になった。 2.1994年11月に行われた振動試験のデータを基に,鶴見つばさ橋(一面吊り斜張橋)のモード減衰解析を詳細に行った。格構造要素の内部減衰エネルギーだけではなく,空力減衰エネルギー,支点摩擦エネルギー,ケーブルダンパー減衰エネルギーを実験と解析から推定し,各減衰要因のモード減衰に占める割合を定量的に示した。 3.エネルギー理論に基づく斜張橋の振動減衰の理論的評価を,省庁・公団から提供を受けた減衰解析に必要な詳細データを基に行い,減衰特性の理論的,定量的の可能性を調べた。対象とした斜張橋は,合成斜張橋である生口橋,トラス桁を有する横浜ベイブリッジ等,特徴的なものである。その結果,種々の減衰要因を適切に評価することで,斜張橋のモード減衰特性が理論的に評価できうることが明らかとなった。
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