本研究は地下水汚染における土壌中の物質輸送に関連する特性の検討とモデル化を目的としている。今年度は(1)吸着やイオン交換のある問題、(2)物質の移流・分散機構のモデル化を検討した。 (1)については、昨年行った風化花崗岩流域でのCaとNaのイオン交換の実験を現地で検証するため兼平流域で降雨時の表土および河川水の採取を行った。表層の土壌水のイオンはその変化が複雑で明瞭な特性を見いだすことはできなかった。深部マサについてはイオン交換と思われる変化が認められたが、前期降雨が多い場合、換言すると基底流出が多い場合、通常とは異なるイオンの流出が観測され、マサ層内のイオン分布の不均質性が推測された。 (2)については、多孔体の分散特性を一般的に明らかにするために、今年度は粒径の異なるガラスビーズとセラミック球を用いた飽和・不飽和の分散特性、縦・横分散特性を実験的に明らかにした。 まず、ガラスビーズの対象に、多孔体の分散係数を乱流拡散における混合距離理論を適用し説明した。また、その場合の間隙流速分布を、多孔体の水分特性曲線と透水係数-含水率関係を用いて推定する方法を提案した。その結果、混合距離は不飽和流では粒径の8倍飽和流では1.8倍となることがわかった。粒径が1c程度のセラミック球の実験では速度分布の推定が困難であり、粒径から仮定を用いて推定した場合には混合距離がガラスビーズの場合より大きくなった。これは、空隙が大きな多孔体の場合、乱流拡散の影響があるためと推察される。横方向分散係数については、ガラスビーズの場合には混合距離は粒径の10分の1と極めて小さくなった。横方向分散係数については今後検討を進める必要がある。
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