本研究は土壌中の物質輸送に関連する特性の検討とモデル化を目的としている。とくに(1)物質の移流・分散機構のモデル化と(2)吸着やイオン交換のある問題を検討した。(1)については、粒径の異なるガラスビーズとセラミック球を用いた飽和・不飽和の実験を行い、多孔体の分散特性及びその構造のモデル化を一般的に議論した。まず、粒径0.25-0.75mmのガラスビーズを対象に不飽和一様場で1次元の分散実験をおこない、分散係数を求めると共に、多孔体の分散構造を乱流拡散における混合距離理論を適用し説明した。また、その場合の間隙流速分布を多孔体の水分特性曲線と透水係数-含水率関係を用いて推定する方法を提案した。その結果、混合距離は不飽和流では粒径の8倍、飽和流では1.8倍となることがわかった。また、飽和に近い部分では不飽和の値から飽和の値へと混合距離が減少する事が分かった。粒径が1cm程度のセラミック球の実験では速度分布の推定が困難であり、粒径から仮定を用いて推定した場合には混合距離がガラスビーズの場合より大きくなった。これは、空隙が大きな多孔体の場合、乱流拡散の影響があるためと推察される。横方向分散係数については、ガラスビーズの場合には混合距離は粒径の10分の1と極めて小さくなった。横方向分散係数については今後検討を進める必要がある。(2)については、風化花崗岩(マサ)でのCaとNaのイオン交換過程を現地土壌を用いた実験によって明らかにした。その結果、マサにおいてイオン交換が行われていることを明かにし、ガポン式を用いた数値計算で再現計算を行った。これらを現地で確認するため兼平流域で降雨時の土中水および河川水のイオン濃度を測定した。その結果、マサについてイオン交換と思われる変化が認められたが、基底流出が多い場合、通常とは異なるイオンの流出が観測され、マサ層内のイオン分布の不均質性が推測された。
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