研究概要 |
昨年度から科学研究費補助金を得て,本研究ではまずロードプライシングや高密度車専用レーンなどの交通需要管理政策を実際に行っている諸外国の事例を海外の文献などから調査し,それらの成果と抱えている問題点などについて検討を行った.そこから,交通需要管理政策を導入するためには,住民の交通問題に対する意識が政策導入の際重要であるとの結論を得たため,国内への交通需要管理政策の適用可能性の検討には地域住民の意識調査が必要となるとおもわれる.そこで交通管理政策の導入に対する住民の意識やライフスタイルについて,名古屋市内において約1000世帯を対象とした調査を行い,サンプルの属性,社会問題に対する意識や交通管理手法に対する協力意識などについてデータを得た.その結果、これまで比較的公共交通機関が不便であった地域では車依存性の社会が形成されており,新規路線を見込んで転入してきた層と,路線発表前から居住していた層では,交通行動に違いが見られる.同様に公共交通機関の未発達な地方都市での行動データを入手し分析を行ったところ,車利用を前提に活動が規定されていると考えられるものが多数見受けられ,モータリゼーションの進展が活動やライフスタイルに影響を与えていることが把握できた.一方都心部において行ったインタビュー調査データの分析からは,これまで交通行動分析において仮定されていたような補償型の選好関係が成り立っておらず,属性による絞り込みなどにより選択が行われていることが判明した.これらはライフスタイルの変化によって引き起こされたと思われ,都市交通とライフスタイルの変化の関連が定性的に分析できた. 以上本研究では主にモータリゼーションとライフスタイルの変化の関係を分析することで、都市交通の今後のあり方の基礎となる分析および提言を行うことができた.
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