研究概要 |
昨年度に製作した、側方土圧、間隙水圧、周面摩擦、先端軸力が直接測定できる模型杭(四成分センサー)を使用し、地震時の周面摩擦挙動を調べるため、実際の粘性土地盤において載荷速度を変えた実験を行なった。載荷速度は0.01,0.1,1,10mm/sとした。 また、せん断中の杭周囲地盤の体積変化(ダイラタンシー)は、周面摩擦挙動に大きな影響を及ぼすことが考えられるが、実際の地盤ではせん断中の土の体積変化は計測できないので、これを調べるため、実験室内で要素試験を行なって実際の地盤の挙動と比較した。要素試験は、杭材(コンクリート)と粘性土の一面せん断試験で、下部せん断箱に杭材を、上部せん断箱にカオリンを入れ、0.8kgf/cm^2まで圧密後、載荷速度を変えて定圧一面せん断試験を行なった。載荷速度は、0.004,0.01,0.1,1mm/sとした。せん断中は杭材中央に設置した間隙水圧計により過剰間隙水圧も計測した。 実地盤における模型杭の貫入から、載荷速度が速い貫入より周面摩擦強度が大きくなることがわかった。これに対して、室内の要素試験では、載荷速度が速いほどせん断強度が小さくなった。体積変化を許す杭材と土の室内要素試験では、載荷速度が遅いほど強度増加につながる負のダイラタンシーが大きくなることがわかった。また、載荷速度が速いほど強度減少につながる間隙水圧の発生量が大きいことも明らかになった。体積変化を許さない非排水状態では、体積圧縮が押さえられるので、大きい負のダイラタンシーを生じさせようとする遅い載荷は有効応力の減少量が大きく、載荷速度が速いほうが強度が増加することが予想される。ここから、実地盤での模型杭の周囲地盤は非排水状態に近いものと推定できる。
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