研究概要 |
昨年度の研究で得られたモデル解析の結果を踏まえ,高架構造物音の発生機構を解明する手がかりを得るため,動的基本解を用いた境界要素法によって鋼I桁の調和振動解析を行った. 解析した鋼I桁は普通鋼の材料諸元を持ち,フランジ幅,ウエブ高は実橋に近い値とした.スパン長については,上下フランジの接合線を固定端とした実橋に近いスパン長の単一板の固有振動解析から,500Hz付近のウエブの面外振動を問題とする場合,スパン長は重要なファクターでないことが分かった.これを踏まえて,短スパンの鋼I桁に対する固有振動解析から,500Hz付近の振動数では桁全体のねじり振動や上フランジの局部的な振動モードが現れるが,ウエブの面外振動モードが卓越することが分かった.一方,スパン中央の上フランジを鉛直および回転加振した強制振動解析でも,ウエブの面外振動が卓越するという結果が得られた.とくに,鉛直加振では,面内加振に近い状態にもかかわらず,面外振動モードが卓越して生じるのは興味ある結果である. 解析結果より,音響放射面積の大きいウエブの面外振動が高架構造物音に大きな関わりを持つという考えを強くした.しかし,鋼桁上を走行する自動車によって,なぜ高い周波数の加振力が発生するのかという問題が残る.これについては,タイヤと路面の相互作用が関係すると考えるのが当然の成りゆきであるが,今後の調査研究の課題としたい.
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