研究概要 |
住宅金融公庫の断熱割増融資資料をもとに,九州北部における住宅の断熱化の進行状況を調査し,在来住宅と断熱住宅の梅雨季および夏季の住まい方(とくに,窓の開閉状況や冷房機器の使用状況,内部結露発生の有無とその被害状況,など)についてアンケート調査した。また、在来戸建,在来集合,断熱戸建,断熱集合のそれぞれについて各4戸,計16戸の室内熱環境や冷房用電力消費量を実測し,住宅仕様と冷房使用状況および結露被害の発生について考察した。さらに,人工気候室において,通気構法における通気層の換気量実験と熱・湿気拡散実験を行い,この結果をもとに,数値シミュレーションにより断熱気密壁体の内部結露の可能性について地域的に検討した。以下に,得られた知見を列記する。 1.福岡では,断熱住宅の暖房負荷は在来住宅の40%減となること,断熱住宅の冷房負荷は在来住宅の14%減にとどまるが,日射遮蔽を併用すれば在来住宅の25%減,さらに通風も併用すれば在来住宅の45%減となり,温暖地では開放可能な閉鎖型住宅の省エネ効果が大きいことを明らかにした。 2.水分ポンテシャルによる壁体湿気移動モデルを提案し,従来のモデルに比べて本モデルが優れていることを実験と計算により明らかにした。また、本モデルを用いて夏季冷房時の内部結露防止に有効な壁体仕様を検討した。 3.平成5年度の断熱住宅竣工率は全国的に平成4年度より約4ポイント増加している。福岡県の断熱住宅竣工戸数は北海道に次いで第2位であり,西日本では圧倒的に多い。住まい方調査については,断熱戸建住宅では窓を閉めて冷房に頼る傾向が顕著であり,結露被害は在来住戸と断熱住戸で大差なく,いずれもカビやダニの発生が指摘されている。 4.通気層に関する実験結果をもとに,通気層の幅が同じ場合には,換気量と温度差はほぼ比例すること,換気量は無次元数の関数として近似できること,通気層の熱・湿気拡散には水分ポテンシャルを用いたスペースモデルが適用できること,などを示した。 5.集中換気システムをもつ高断熱高気密住宅(R-2000クラス)を対象に,夏季および冬季の実測調査および数値シミュレーションを行い,温暖地における断熱気密住宅の設計指針を明らかにした。
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