研究概要 |
初年度のアンケート調査をもとに,「在来戸建」3戸,「在来集合」4戸,「断熱戸建」4戸,「断熱集合」4戸,計15戸の住宅(いずれも福岡県内)を選定し,室内温湿度,冷房用電気消費量,結露発生の有無とその被害状況などについて考察した。また,これとは別に,福岡・山口両県内の戸建住宅6戸を対象に構法別および部位別の気密性能を実測した。これらの結果と初年度の実験結果をもとに計算モデルに改良を加え,数値シミュレーションにより季間蒸暑地域に適した壁体の断熱,気密,防湿指針について検討した。以下に,得られた知見を列記する。 1.アンケート調査によれば,結露被害は「断熱集合」に多く,47戸中20戸(43%)でカビやシミなどが報告されている。とくに,「断熱」のダニ発生率は「在来」の2倍近くにのぼる。 2.「断熱」の居住者は,日射遮蔽や通風促進に対する関心が低く,冷房環境への依存度が高い。結果的に「断熱」の夏季電力消費量は「在来」より大きくなる傾向がある。 3.気密性能は外断熱構法が最も高く,次いでパネル構法,枠組み構法,軸組み構法の順となる。なかでも,枠組みおよび軸組み構法の気密性は施工レベルによるバラツキが大きい。 4.全隙間に対する換気設備の隙間は5〜46%,窓や出入口などの開口部の隙間は7〜29%,それ以外の隙間は35〜74%であった。壁と床や壁と天井の接合部,さらに壁面自体に隙間が多く存在する。 5.住宅の地域別断熱気密推奨値を暫定的に定めた。例えば,全日空調の場合,札幌の最適断熱材厚さ(グラスウ-ル10K)24cmと最適隙間相当面積2.1cm^2/m^2に対して,福岡では14cmと4cm^2/m^2,同じ福岡でも間欠空調の場合は3.5cmと7.8cm^2/m^2となる。 6.季間蒸暑地域における外壁の防露指針を定めた。例えば,外装材裏面に通気層を確保し,通気層内側には透湿シートが必要,内装材裏面の防湿シートは不要(福岡では,外装材裏面透湿シートと内装材裏面部材の透湿抵抗比は1:2あるいは1:2以下が適当)である。断熱材としては発泡系が望ましいが,繊維系を用いる場合も北面への採用は避けたほうが無難である。
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