研究概要 |
研究対象とした開口部は近年開発が進んでいる断熱構造を持つ開口部である。開口部に含まれる中空部は多くの場合密閉状態であり、かなりの熱抵抗を有するため、開口部全体としての断熱性に大きく影響する。一連の研究を通じて、このような密閉中空層の熱抵抗をできだけ精密に計算することが開口部の熱貫流率の計算に重要な意味を持つため、密閉中空層の熱抵抗の計算精度を高める必要性が痛感された。そのため、開口部に含まれている様々な形状の中空部の熱抵抗の計算法をまとめた。プログラム化された計算法は、海外での既往の実験式を応用して対流熱伝達率を計算し、中空に面する側壁が放射熱平衡であるとして放射熱伝達を計算し、これらを合成して熱抵抗を得る方法であり、任意の傾斜角の中空層に適用できる。熱貫流率としては、玄関扉についての計算法をまとめた。ここで開発した熱貫流率の計算法は、扉パネル部とガラス部は面熱貫流率として扱い、枠部,エッジ部,額縁部,補強材部は線熱貫流率、錠と郵便受けは点熱貫流率として扱い、これらの熱貫流率を合成して扉全体としての総合熱貫流率を得るというものである。点熱貫流率と隅各部の影響は三次元有限要素法により計算したが、その影響はわずかであることを確認した。玄関扉もの熱貫流率の計算値を試験値と比較した結果、そのずれは最大で20%程度であった。玄関扉は熱橋と中空層の集合体であって熱貫流率の計算が困難な対象であり、この程度のずれに納まったのは一応満足できる結果であると考えられる。本科学研究で当初予定したサッシの熱貫流率の計算法はまとめるには至っていない。しかし、玄関扉の計算法を拡張することでサッシの熱貫流率の計算法を整理することは可能であると考えられる。今後そのような方法に関する研究を継続する予定である。
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