平成7年度は前年までの研究について、さらに検討を進めると共に、新たに立方体と異なる形状の模型水槽実験及び、その数値解析を行ない、以下のような研究成果を得た。 (1)槽内温度成層の安定性に関する波動論的解明 蓄熱層の温度成層の安定性を決定するのは、表面定在波と温度成層中の浮力振動の相互渉特性である事、表面定在波はその振幅が大きくなると非線形性を持ち、通常の共振以外に分調波成分の影響も考慮しなければならず、広い範囲で不安定現象を生じる事が、昨年度の研究から示唆された。本年度は表面波動の目視観察などにより、温水吐出方向やAr数の表面波動の卓越モードへの影響などについて、さらに詳しく分析し、これらの影響についての様々な裏付けを得た。 (2)立方体及び立方体以外の水槽実験による検討結果 (1)配管方式蓄熱槽の混合特性を決定する無次元数 従来、使用されてきた代表長を配管径d_0とするAr_<in>は吐出噴流の局所的な特性を決定しているに対し、完全混合距離、蓄熱効率など水槽全体の水温混合特性を基本的に決定するのは無次元数Ar_<in>・(L_2/d_0)^2(L_z:槽水深)である事を明らかにした。 (2)水槽内の乱流拡散係数を決定する要因 水槽内の温度躍層の乱流拡散係数については、従来実験結果からの推定値が幾つか報告されているが、本研究では、これまでの実験結果の数値解析から、乱流拡散係数が、基本的にはレイノルズ数により決定されるが、浮力による乱流の減衰効果を考慮すれば、(Re/Ar_<in>)・d_0^4に対して、より密接な関係のある事を明らかにした。
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