研究概要 |
初年度(平成6年度)は,主に阪神間に住む身障者を対象に、アンケートにより建物内で火災に遭った時の避難に対する意識調査を行い,平成6年末にほぼ回収を終えたが,その直後に阪神・淡路大震災が起こった。初年度のアンケート対象者の大半が被災地に住んでいたので,平成7年度は,地震後の火災時の避難に対する意識の変化を調べることを主目的に,再度同じ人を対象にアンケートを実施した。なお地震関連の設問は,日本建築学会が行った地震時の避難行動アンケートの設問にできるだけそろえ,一般健常者との比較ができるようにした。今年度の主要な研究成果を以下にまとめる。 1.日常の移動能力と,地震直後の行動に明らかな関係がみられる。日常の行動能力が低い人ほど,地震後に屋外に出るのに苦労しており,また屋外に出るのを助けてもらった人が多くなっている。 2.避難場所に避難した人は全体の36%であるが,推定震度7の地域に限ると,その割合が70%に上がる。 3.地震直後の避難先は,日本建築学会アンケートと比較して小学校の割合が低く,親戚・知人宅が高いこと,選択理由では「居場所から近い」,移動方法では「自動車」が多いことが顕著な違いである。 4.火災時の避難に不安を感じない階の回答比率は,地震後のアンケートでは1階が地震前・後とも100%で変化がないが,それ以外の階では地下1階,地上2,3階を中心に低下し,地下2階,地上4階になると全員が火災時の避難が不安と回答しており,地震の影響が明確に見られる。 5.新聞記事等から,震災による身障者の生活上の問題点を抽出・整理した。
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