(1)X線反射率測定装置を設計・製作した。チャンネル型結晶モノクロメータ、2軸ゴニオメータ、試料取り付け・位置調整台、アナライザー、スリット系、シンチレーションX線検出器で構成されている。モノクロメータに非対称反射を用いることにより、従来の4〜5倍のX線強度を得ることができた。アナライザーは目的に応じてチャンネル型結晶とスリットを使い分ける。前者は鏡面反射率の高分解能測定、後者は微弱な非鏡面散漫散乱の測定に用いる。 (2)非鏡面X線散乱の理論を研究し、ボルン近似を用いた計算プログラムを入手した。これにより、表面・界面ラフネスの面内height-height correlation、フラクタル次元の解析が可能になった。 (3)異常分散効果を利用して2X線波長で鏡面反射率を測定し、薄膜の電子密度分布をデータから直接求める方法を研究した。X線反射率実験装置の設計・製作は達成された。この装置で非鏡面反射を測定することは当初計画していなかったが、ラフネスの面内構造が調べられ、鏡面反射による縦方向の構造情報と合わせてより完全な解析が行なえるため、これを可能にした。散乱理論の研究、計算プログラムの入手も当初計画には無かったものである。従来の多層膜X線鏡面反射データの解析は均一な電子密度をもつ膜を仮定しているが、これは正しくない場合が多い。モデルに依らず電子密度分布を求める異常分散法によりこの欠点が改善され、より正確な解析が可能になる。
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