研究概要 |
(1)X線反射率測定装置の整備:前年度に設置したX線反射率測定装置は2軸ゴニオメータ(非対称チャンネル・カット結晶をモノクロメータとして使用)、シンチレーションX線計数装置、制御系から成る。アナライザーとしてスリット、チャンネル・カット結晶が選択できる。回転陽極型X線発生装置(出力18KW)の線焦点を縦長で用い、高分解能のX線反射データを短時間に収集できるが、光学系が厳密なため、線源出力を変化させたときの陽極ドラムの熱膨張による焦点位置の僅かな移動、実験台および実験室の床の変形などにより、X線強度が変化することが発見された。このため、X線発生装置を一定の出力で運転する、踏台を設けて敏感な場所に実験者の体重がかからないようにするなどの対策を講じた。一連の走査を連続して自動的に行うため、スケジュール・プログラムを利用している。計数系の数え落としをソフト的に補正し、500,000 cpsまで直線性が得られた。(2)X線反射率による多層膜の構造研究:X線フレネル反射プロフィルの解析により積層膜の厚さ、界面ラフネスを非破壊で決定できるが、積層膜の電子物性および凝固に関して情報を与える界面の相関構造を調べるには、非鏡面反射(散漫散乱)を測定し、2次元逆空間のできるだけ広い領域における散乱強度分布を知る必要がある。本装置はこのような測定に十分使えることが分かった。現在、巨大磁気抵抗薄膜試料についてデータを収集しつつある。(3)解析プログラムの開発:最近発展した歪み波ボルン近似を使うX線散乱理論により実験データを解析する計算機プログラムの開発をほぼ完了した。
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