研究概要 |
3d遷移金属系非平衡エピタキシャル人工格子に関する研究によって以下の新しい知見を得た。 1.分子線エピタキシ-(MBE)装置を使用して平坦性の異なる基板上に試料を作製した。高真空イオンビームスパッタリング(I.B.S.)装置を使用して基板をミリングすることによって平坦性の異なるCu(001)単結晶基板を作製し、高純度Cu (Au)とFe原子を交互に20層積層させることによってエピタキシャル多層膜を作製した。平均の飽和磁化を測定した結果、平坦基板上の平均の磁化は凹凸基板上のものより磁化が小さいことが判明した。fcc-Feはhigh spin stateとlow spin stateの2状態があることが判明している。この2状態はFeの原子容に依存し、磁気体積効果に起因すると考えられる。平坦な基板上ではFeは表面拡散によって原子再配列を起こしやすく、最も安定なlow spin stateになりやすいことが明らかとなった。 2.MBE装置を用いてエピタキシャル非平衡FeNi/Cu多層膜を作製した。Fe_<1-x>Ni_x超薄膜は表面再配列のないfct構造であることが判明した。この超薄膜の平均の磁気モーメントは、Fe濃度の増加とともにスレータ・ポーリング曲線に沿って増加し、x=0.35で急激に減少することがわかった。メスバウァー効果の測定結果からこれらの試料の内部磁場分布を測定し、2状態モデルで説明できることが明らかにした。 3.I.B.S.装置を用いてFeCo/Cu多層膜を作製し、巨大磁気抵抗効果に関する研究を行った。Co濃度が25at%で磁気抵抗変化率は最大30%(4.2K)を示した。また、FeCo層が(001)配向したbct構造となり,膜面内に格子が伸びることにより,層間の反強磁性結合が安定して磁気抵抗変化率が増加することを見いだした。 4.MBE装置を用いて非平衡bct-Ni/Crエピタキシャル人工格子を作製した。Niの膜厚の増加によってbct構造から再配列構造へ変化することが判明した。磁化およびキュリー温度はNi膜厚の減少に伴い、減少することが判明した。
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