研究概要 |
3d遷移金属系エピタキシャル人工格子に関して多くの新しい知見が得られた。また、人工格子の実用化に向けた新しい研究を行った。主な結果を以下に列記する 1.昨年度までに、[fcc-Fe/Cu]人工格子のfcc-Feの磁性にはhigh spin stateとlow spin stateの2状態があり、基板平坦度によって2状態の混合状態が変化することが判明しているので、平成8年度は基板平坦度を変化させ、Cu基板の平均平坦度が0.6nm程度以下であればlow spin state、2nm程度以上ではhigh spin stateになることが判明した。次に、微細加工によって平坦度(凹凸)を周期的に変化させた基板を用意し、その上に[fcc-Fe/Cu]人工格子を成長させた。その結果、周期的な凹凸に対応して、磁気モーメントが周期的に変化する面内二次元磁気周期性を持つ人工格子を作製することに成功した。加工を微細にすれば磁気メモリーへの応用が期待できる。 2.MgO(001)基板上に[TM/Cr](TM=Fe,Co,Ni)エピタキシャル人工格子を作製し、構造と磁性を調べた結果、Feはbcc,Coはhcp、Niは3MLまではbctでその後成長に伴って、c(2x2)構造→fccドメイン構造の順に変化することが判った。また界面における磁性について検討した。そして[Fe/Cr]では4.2Kで116%、RTで15%の巨大磁気抵抗効果得られた。[Fe/Cr]はいわゆる結合型人工格子で磁気抵抗効果の飽和磁場が数テスラにもおよび、実用化は不可能と考えられてきたが、本研究では[Fe/Cr]の強磁性結合と反強磁性結合を組み合わせた設計を行い、数百エルステッドの低磁場で磁気抵抗が著しく変化する人工格子を開発した。結合型多層膜の巨大磁気抵抗効果が実用化できる可能性が出てきた。 3.イオンビームスパッタリング法により作製した[Fe(Co)/Cu]人工格子の熱処理を行い、4.2Kで53%、室温で29%の巨大磁気抵抗効果が得られた。 4.平成6年度〜平成8年度の研究成果をまとめた。
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