研究概要 |
強磁性元素であるCoと非磁性元素であるPtとを選び,多層膜の基礎となるPt単層膜およびPt/Co多層膜を,分子線蒸着法をもちいて,Si(111)基板上に成長させ,エピタクシアル成長に必要とされるSi基板の状態やCuバッファ層の役割について調べ,さらに多層化の効果を調べた。 Pt単層膜の実験では,Si(111)基板を加熱して表面を(7×7)構造にした場合は購入したままの状態2種類を,また,Cuバッファ層を挟んだ場合と挟まない場合との2種類を選び,組み合わせて合計4種類とした。表面を(7×7)構造にした場合は表面がきわめて清浄にされたことを意味しているし,購入したままの状態は表面にSiO_2が存在することを意味している。Pt/Co多層膜の実験ではCuバッファ層を挟んでいる。 清浄なSi基板上に積層したCuバッファ層は平坦な表面を持ち,その結晶方位関係はCu(111)〈112〉//Si(111)[110]であった。このCuバッファ層状ではPt膜およびPt/Co多層膜はエピタクシアル成長した。結晶方位関係はPt(111){112]//Cu(111)〈112〉であった。Pt/Cu,Pt/Co,Co/Ptの金属同士のエピタクシアル成長は,面内格子定数を連続的に変化させる。pseudomorphic成長をした。清浄なSi基板上に直接Ptを積層すると(111)面配向組織は得られたが,面内方位は特定の方位関係を持たなかった。Pt/Si界面にはPtの珪化物が生成した。SiO_2に覆われたSi基板上に積層したCuバッファ層は多結晶組織となり,さらにその上に積層したPt膜も多結晶組織となった。SiO_2に覆われたSi基板上に直接Ptを積層すると,弱いながら(111)面配向性を示した。また,結晶が合体して数百ナノメートルの結晶となった。上記の結果を踏まえて,Cuバッファ層上に作成したPt/Co多層膜はエピタクシアル成長し,優れた垂直磁気異方性を示した。 現在,界面の3次元構造を走査型プローブ顕微鏡ナノメータスケールで,また,断面構造を電子顕微鏡によって調べている。さらに,電子物性との相関を考察する予定である。
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