研究概要 |
昨年度に引きつづき,強磁性元素であるCoと非磁性元素であるPtとを選び,多層膜の基礎となるPt単層膜およびPt/Co多層膜を,分子線蒸着法をもちいて,Si(111)基板上に成長させ,エピタクシアル成長に必要とされるSi基板の状態,結晶成長の様子,薄膜の構造表面トポグラフ,Cuバッファの役割,について調べた,更に,本年度は薄膜の界面構造をナノスケールで調べ,電子物性との関連を調べた. 界面構造の研究では,面内・面直方向共にnm尺度の分解能を持つ走査型トンネル顕微鏡(STM)および原子間力顕微鏡(AFM)を用い,Pt/Si界面トポグラフをnm尺度で面内観察し,TEDによる相の同定結果と併せ,界面反応の様子を調べた. 界面反応により生じた相は,α-Pt_3Si,β-Pt_2Si,PtSiの3種類であり,β-Pt_2Siのみエピタクシアル成長した.界面の組織には,帯状組織S,網目状組織,島状組織の3種類が存在した.帯状組織Sは晶相を示したため,エピタクシアル成長したβ-Pt_2Siに対応すると考えられる.残った網目状組織と島状組織については,島状組織の方がSi基板側に存在するため,島状組織はSiの含有量が多いPtSiに対応し,網目状組織はα-Pt_3Siに対応すると考えられる. 以上の結果から,Si基板上に積層されたPtの成長と界面反応について考察した.β-Pt_2Siは,状態図では約970K以上で存在する高温相であり,エピタクシアル成長していることから,Ptを積層したときの最初に生成した珪化物,いわゆる1st-phase珪化物であり,Si基板のステップに沿って帯状に成長して帯状組織Sを形成する.上に積層されたPt膜は(111)繊維組織となる.Ptの結晶は,同じ方位の結晶粒が集まってコロニーを形成する.コロニーとコロニーの境界は高傾角粒界となり,Ptの拡散が速く,α-Pt_3Siが成長して網目状組織を形成する.網目状組織の多重点ではPtSiが核生成し,孤立島状組織を形成する.PtSiはβ-Pt_2SiとSiの界面では成長が進み,凝集島状組織を形成する.
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