研究概要 |
β-Ti中におけるFe原子の高速拡散を、高温メスバウア分光法によりその場観察し、高速拡散機構をミクロな立場から理解することを目指している。 1.Ti_<100-x>Fe_x(X=1,6,13,17at%)の試料(^<57>Fe富化)を電子ビーム溶解により作製し、超高真空高温メスバウア炉を用いて、β相内でFe濃度を変化させて、詳細にスペクトルの測定を行なった。結果はFe濃度にほとんど依存しない:(1)900℃以下では、小さい四重極分裂を持つ一つの成分で記述できる。これはFe原子が立方対称位置からズレて、"ωエンブリオ中"に存在していることを示唆している。(2)900℃付近で、Fe原子の局所ジャンプによると考えられる四重極緩和を示し、温度の上昇と共に線幅の増加が認められる。(3)920℃以上で、線幅の広い第2成分が出現し、温度の増加とともにその強度を増し、1050℃以上で第一成分と第2成分は区別できなくなる。 2.トレーサー実験により、同一試料でFeの不純物拡散係数の温度変化を、濃度の異なる試料でそれぞれ測定し、"メスバウア拡散係数"と"トレーサー拡散係数"の比較を行なった。 3.高温β相中のωエンブリオを、動的効果を含まない低温で調べるために、応力誘起ω変態の研究を行うことを計画し、引っぱり試験機購入して、一軸応力下でのメスバウア・スペクトル測定装置の開発を開始した。 4.ωエンブリオが高速拡散するFe原子の形成過程と密接な関係があることが、本研究から明らかになった。これを考慮して、β-Ti中のFeの高速拡散機構に対するジャンプモデルの構築を進めている。
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