研究概要 |
金属超微粒子を含有するガラスは、大きな非線形感受率と高速光応答性を示すことから「光制御型の高速光スイッチ」としての適用が期待されている。本研究は、高濃度銀イオン含有ガラスを基板として作製し、これに比較的低エネルギー(10-20keV)のイオンビームを照射して銀超微粒子を析出させることを検討してきた。 銀イオン添加の容易さと耐候性を考慮し、P_2O_5-Al_2O_3-Ag_2O (Ag_2O=10〜20mol%)系ガラスを作製し、ガラスの基本的性質(ガラス化範囲、光学的性質等)について明らかにした。このガラスを基板として用い、Ar^+,N_2^+,O_2^+イオンを照射し、確かに数十nm直径の銀超微粒子が析出することを、銀の微粒子に特有な光吸収(プラズマ吸収)の発現や、電界放射型走査電顕(FESEM)による観察によって確認した。析出銀超微粒子の濃度は、波長420nmに出現するプラズマ吸収の強さによって比較することができ、ガラスへの添加銀イオン濃度やイオン引き出し電圧が高い程、強い光吸収が出現することが示された。 金属超微粒子析出ガラスの非線形感受率を実験的に確認するためには、析出層が100nm程度と非常に薄いため、上記組成のガラスでは析出濃度が不十分であった。このためさらに、微粒子析出メカニズムから考え、実質的に吸光度が増加するガラス組成を探索し、アルカリ成分(Na_2O)の添加が有効であることを明らかにした。P_2O_5-Al_2O_3-Ag_2O(15〜20mol%)-Na_2O(15〜20mol%)のガラスでは、Na_2O無添加のガラスと比較して、同一の照射条件で、ほぼ2倍の吸光度を実現することができた。波長450nmでの縮退四光波混合法により3次の非線形感受率_X^<(3)>を測定し、5.5-8.8×10^<-7>esuという高い値を確認することができた。
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