本研究の目的は、特に高いエネルギーをもった放射線に対する新しいシンチレーション結晶の探索と、その発光の長波長化と共に発光寿命の短寿命化など、総合的な放斜線検出の性能の向上を目指す事である。現在、BaF_2にEu^<2+>をドープした単結晶を用いX線照射で、液体窒素温度で黄色のシンチレーション光を得ている。これはこの種の結晶の放射線による発光として、最も波長の長いものであり、所期の目的を達成する第一歩として大きい成果であり、まとめた論文を投稿中である。これまでに得られた成果では、希土類イオンをドープした単結晶について発光特性の非線形性、バイブロニック特性、新しい複合センターの発見などがあり、また放射線損傷により生じた格子欠陥の同定や線量依存性などの基礎物性についてもまとめ、二編の論文に発表を行なった。蛍石型単結晶の間で混晶を、混晶比を細かく変えて作りそれらの精細な違いを磁気的、光学的に調べ、発光エネルギーの混晶比に対する非線形的な変化という興味ある結果についても投稿中である。またX線源のパルス化により、基本的な蛍光寿命、発光波長の測定を行ないこれまでのデータを含めて新しい論文にまとめつつある。材料の開発については、自前で単結晶を製作できる十分な装置を保有整備しつつあり、この点で素性のわからない試料を他から購入せねばならない環境と異なり、試料製作の細かい仕様、条件を自由に設定できる利点を持っている。今後の課題として地理的に近い距離で、研究用の強い線源(コバルト60)を保有している都立アイソトープ研の協力を得て、高エネルギー放射線に対する耐久性能をテストすることに重点を移していく。
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