研究概要 |
前年度に展開したセラミックス/金属系傾斜機能材料(Functionally Graded Materials, FGM)の微視力学解析に基づく熱応力緩和設計法に関し,その有効性を検証するため,異なる傾斜構造をもった数種のジルコニア/ニッケル系のFGMモデルを,同一の遮熱性能を有するように設計し,粉体積層・ホットプレス焼結法により各モデルの供試体を作製して一連の実験を行った. まず,温度落差場におけるFGMの熱的・力学的な応答を調べるための試験装置を設計・製作した.本装置は,水冷試料ホルダーに固定した円板状FGM供試体(直径20mm)のセラミックス側表面を繰り返し加熱し,その熱サイクル負荷による熱応力割れ応答をアコースティックエミッション(AE)法により検出するものである.特に一次元熱流場の実現が重要であることから,透明石英棒(直径20mm)による赤外線導入方式の加熱装置を用い,供試体の加熱側表面温度分布を計測するためにサーモグラフィーを使用した. 熱負荷を段階的に増大させながらジルコニア側表面温度が最高1100℃に達するまで繰り返し加熱・冷却試験を行い,FGM供試体の表裏両面における温度計測値を入力データとしてその内部の温度分布を差分法により数値解析した.さらに,この内部温度分布の経時変化に伴って発生する熱応力分布を微視力学アプローチにより弾塑性解析し,その結果を基にして,AE法で検知した割れ発生に関する検討を行った.以上の結果,金属リッチの傾斜構造がセラミックスリッチの傾斜構造よりも有利であることなど,FGM構造の最適設計に資する多くの有用な知見を得た.
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