繊維強化複合材料の界面メゾメカニクス

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06452320
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 落合 庄治郎 京都大学, 工学部, 教授 (30111925)
• 研究分担者: 北條 正樹 京都大学, 工学部, 助教授 (70252492)
• キーワード: 複合材料 / 強度 / 破壊 / 界面 / メゾメカニクス / 計算機シミュレーション / モデリング / コーティング

研究概要

繊維強化複合材料の「繊維の引き抜け、架橋、界面剥離、クラック形成などのメゾスケール力学事象と界面構造の関係の定量化」と「材料内部の各所で統計的ばらつきをもって生じるこれらメゾスケール力学事象と材料全体の巨視的応答の相関評価」を体系的に記述できる界面メゾメカニクスの開拓を目指し、強さ、靱性および疲労特性を測定し、解析・モデリングを行った。主な結果は以下のように要約される。
(1)SiC繊維で強化したSiCセラミック(SiC/SiC)、Nb_3Alフィラメントで強化した銅(Nb_3Al/Cu)、チラノ繊維で強化したアルミニウム(SiC/Al)を用いて、引張、破壊、疲労試験を行い、特性測定を行うと同時に、繊維破断や界面剥離の様相を観察した。SiC/SiCでは界面剥離が顕著であり、それらの集積の結果、繊維の引き抜けを伴って破断した。Nb_3Al/CuおよびSiC/Alでは界面は強固であり、繊維破断の集積が複合材全体の破壊を決定した。
(2)SiC/SiCではシェアラグアナリシス法で応力分布を計算したところ、界面剥離によりクラック先端はほぼ完全に鈍化し、その進展は止まるとの結果を得た。この計算結果より実験結果はよく説明できた。
(3)Nb_3Al/CuおよびSiC/Alの繊維(フィラメント)破断の集積を定量化するため、抽出繊維の強度分布を求め、それを使ってモンテカルロシミュレーションを行ったところ、強度に関する実験結果をよく再現できた。詳細な検討の結果、これらの複合材料では弱い繊維の破断が集積され、これらの協力現象(相互作用)の結果、複合材全体が破断する「集積型破断」と結論された。
(4)上記(3)では繊維強度のばらつきは大きくとも複合材強度のばらつきは極めて小さくなることを初めてメゾメカニクスの見地より明らかにできた。

研究成果

• [文献書誌] Shojiro Ochiai: "Nb_3Sn tensile strength and its distribution estimated from change in superconducting critical current of preloaded multifilamentary composite wire" Cryogenics. No. 5 Vol. 35. 55-60 (1995)
• [文献書誌] Shojiro Ochiai: "Multiple cracking of a coating layer and its influence on fibre strength Part 1 Calculation of the energy release of the fiber at cracks for non-uniform crack spacing" Journal of Materials Science. Vol. 30. 274-279 (1995)
• [文献書誌] Shojiro Ochiai: "Multiple cracking of a coating layer and its influence on fibre strength Part 2 Monte Carlo simulation" Journal of Materials Science. Vol. 30. 509-513 (1995)
• [文献書誌] Shojiro Ochiai: "Temperature-Dependence Mechanism of Tensile Stregth of Si-Ti-C-O-Fiber-Aluminum Matrix Composites" Metallurgical and Materials Transactions A. No. 3 Vol. 26A. 647-652 (1995)
• [文献書誌] 落合庄治郎: "Nb_3Sn多芯超電導複合線材の臨界電流に及ぼす予荷重効果" 低温工学. No. 6 Vol. 30. 285-291 (1995)
• [文献書誌] Shojiro Ochiai: "Relation of the strength distribution of Nb_3Sn to the critical current of a pre-stressed multifilamentary composite superconductor" Superconductor Science and Techonology. Vol. 8. 863-869 (1995)