本年度は、Modified Embedded Atom Method(MEAM)を用いたサーファクタントエピタキシ-の理論計算を行い、どのような金属の組み合わせでサーファクタントエピタキシ-が起こり得るかということを明らかにした。 異なった種類の金属を数原子層レベルで交互に積層した金属多層膜では、垂直磁気異方性や巨大磁気抵抗効果など特異な物性が発見され、光磁気メモリ材料や磁気抵抗ヘッドなどへの応用が期待されている。これらの新物性は金属ヘテロ界面構造に敏感であり、金属超薄膜の成長初期過程とヘテロ界面構造制御が重要なポイントである。 本年度はMEAM法によるサーファクタントエピタキシ-理論計算を行った。基板Bの上に薄膜Aが1ML載った構造(A/B/B)と薄膜と基板の1MLが入れ替わった構造(B/A/B)のエネルギー差を計算した。B/A/B構造が安定である場合は、B上のAのヘテロエピタキシ-に際して基板原子が表面に現れ、成長表面を平坦化する可能性がある。逆にA/B/B構造の方が安定な系については、B金属のホモエピタキシ-においてA金属がサーファクタントとなり得る。B/A/B構造が安定なのは基板の表面エネルギーの方が小さい場合であることがわかった。Al/Pd、Al/Ptでは合金形成エネルギーが負の大きな値、すなわち合金を形成した方が安定であるため、基板の表面エネルギーの方が薄膜の表面エネルギーより2倍程度大きいにもかかわらず、B/A/B構造の方が安定となっている。逆に薄膜がbccの系では、基板の表面エネルギーの方が小さいがA/B/B構造の方が安定となるものが合金の形成エネルギーが正の場合に認められた。
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