研究概要 |
1.モデル実験として,スプレー法によりセラミックス上にLa(III)-Cr(VI)の前駆体皮膜を形成し,熱分解することによりクロムの異常原子価状態酸化物,LaCrO_4,の薄膜を形成した.この皮膜を,同様の方法で形成した導電性のペロブスカイト型希土類複合酸化物,LaCrO_3,と比較したところ,温度と共に導電性が増加する半導体的特性を持ち,LaCrO_3より導電性が高いが,La(III)の一部をCa(II)で置換したLa_<0.8>-Ca_<0.2>CrO_4は非置換型とまったく同じ挙動を示し,ペロブスカイト型のような原子価制御による導電性の増大は起きないことを見出した. 2.モリブデン酸アンモニウムと硫酸マグネシウム(MgSO_4)の混合溶液中で,アルミニウム,銅,導電性ガラスなどの電極をカソード分極することにより,Mo(IV)-Mo(V)-Mo(VI)系の混合原子価オキシ水酸化物薄膜を形成できる条件を見出した。MgSO_4をNa_2SO_4,(NH_4)_2SO_4,ZnSO_4,Mg(OCOCH_3)_2等に変えると不均一で密着性の悪い皮膜となり、MgSO_4は必須成分であることを明らかにした.また,濃度とともに皮膜中のMg/MOモル比が増加して,密着性や光学的特性が向上した.すなわち,同温度の黒体放射を基準とすると,この皮膜は波長4〜10μmの赤外領域で30%前後,10μmより長波長側の遠赤外領域で90%以上という放射特性を示すが,Mg/Moモル比が低くなると,放射率の差が小さくなり遠赤外放射特性が低下した. 3.上述の方法で形成した混合原子価モリブデンオキシ水酸化物薄膜は,大気中,200℃,12時間の加熱でもほとんど結晶化しない無定形の物質であり,加熱の有無にかかわらず電気伝導性があることを見出した.
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