1.La(III)-Cr(VI)水溶液中でカソード分極を行なうことにより、電極上に化学量論組成のLaOH(CrO_4)nH_2Oの皮膜を形成し、熱処理によってクロムの異常原子価状態酸化物LaCrO_4の単一相が得られる条件を確立した。温度、時間および酸素分圧の関数としてLaCrO_4の安定領域を明らかにし、低酸化状態のLaCrO_3への分解機構も明らかにした。LaCrO_4は500℃より低い温度では酸素分圧によらず安定であり、常温では、10^<-7>Paオーダーの超高真空中でも分解しない。 2.LaCrO_4薄膜の導電性は150℃程度までは低いが、それ以上では温度と共に指数関数的に増加し、半導体的な特性を示す。同様の方法で形成したペロブスカイト型のLaCrO_3より導電性が高いが、La(III)の一部をCa(II)で置換したLa_<0.8>Ca_<0.2>CrO_4は非置換型とまったく同じ挙動を示して、ペロブスカイト型のような原子価制御による導電性の増大は起きないことが分った。 3.モリブデン酸アンモニウムと硫酸マグネシウム(MgSO_4)の混合溶液中で、カソード分極することにより、電極上にMo(IV)-Mo(V)-Mo(VI)系の混合原子価オキシ水酸化物薄膜を形成できる条件を見出した。MgSO_4は皮膜の均一性や密着性を向上するための必須成分であることを明らかにした。 4.混合原子価モリブデンオキシ水酸化物薄膜は、大気中、200℃、12時間の加熱でも結晶化しない無定形の物質である。皮膜の分光放射率は波長4〜10μmの赤外領域で30〜50%、10μmより長波長の遠赤外領域で90%以上で、遠赤外放射特性がある。この皮膜には加熱の有無にかかわらず導電性がある。 5.希土類の硝酸塩水溶液中でカソード分極することにより、電極上に混合原子価、例えばCe(III)-Ce(IV)、のゲル状オキシ水酸化物皮膜を形成できる条件を見出した。
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