本年度は当初の計画通り、超音波顕微鏡の音響カプラーを、従来の純水から水銀に変更した測定系を試作した。蒸気圧の高い水銀を扱うため、水銀を満たすタンクは純水をいれる等、水銀蒸気の飛散防止対策をとった。音響レンズの走査、測定については、IBM-PC機に内蔵したA/D変換ボードとステッピングモータコントローラーを組み合わせ、自作したソフトウェアで高精度に測定できるように改造した。なお、音響レンズには、ポリマー振動子とガラスレンズを組み合わせて試作した、点集束型の音響レンズを用いた。試作した装置を組み合わせて、V(z)曲線を測定した結果、音響レンズ、水銀タンク部、測定用ソフトウェアのそれぞれにおいて、さらに改良の余地はあるもの、試作した測定系で従来の装置と同等のV(z)曲線が測定できることを確認した。さらに低減衰材料のガラス、減衰の大きいステンレス鋼、インコネル合金のV(z)曲線を、純水カプラーと水銀カプラーの両方で測定し、比較した。その結果、純水カプラーでは測定の困難だったステンレス鋼、測定が不能だったインコネル合金についても、水銀カプラーを用いて明確なV(z)曲線を測定できたことから、従来測定できなかった高減衰材料用の超音波顕微鏡として有望であることを確認できた。来年度は、音響レンズの試作方法、操作方法等をV(Z)曲線を測定しながら詳細に検討を加え、さらに改良するとともに、測定できたV(z)曲線から音速を高精度に測定できる解析用ソフトウェアの開発、測定した音速が、表面波と考えてよいかどうかの考察等を行い、高減衰材用の超音波顕微鏡として確立する。
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