酸化物系超伝導材料のうち、臨界温度T_cが90K級のYBa_2Cu_3O_<7-X>系超伝導材料は、最も一般的であり実用化が期待されている。実用化に際しては、材料の成形加工及び接合技術が不可欠であるが、接合技術についてはこれまでほとんど報告されていない。 本研究では、まず酸化銀を添加してセラミック高温超伝導体を作製し、焼結体の臨界温度Tc・臨界電流密度Jc等の超伝導特性の測定を行った。また、種々の比率の酸化銀と超伝導セラミック原料の混合粉末をインサート材として焼結体の接合を行い、せん断強度試験により接合性に及ぼすインサート材について検討した。さらに、示差熱分析により酸化銀の酸素解離現象を把握し、添加剤の挙動が超伝導特性に及ぼす効果について検討した。以下に、本研究によって得られた主な結果をまとめて記す。 1.YBCO系超伝導体にAg_2Oを添加することによって超伝導体の密度が増加し強度も向上した。また、臨界温度Tcも改善される傾向にあり、臨界電流密度Jcも向上した。 2.インサート材としてAg_2Oを用いて接合すると接合部のせん断強度は向上するが、接合部における超伝導特性は、若干低下した。 3.最適組成の超伝導セラミックス原料粉末とAg_2O粉末の混合粉末インサート材としてを用いて接合すると、超伝導特性を損なわずに、接合を行うことができる。 4.酸化銀は、接合加熱途上で酸素を解離し、銀単体粒子としてセラミック粒界に分布するようになる。 5.以上より、酸化銀添加剤は、超伝導体の結晶構造には大きな影響を与えないが、焼結体を緻密にし焼結体自体の強度および接合強度を向上させると共に、臨界電流密度Jcも向上させる効果がある。また、接合の超伝導特性を維持するには、YBCO-Ag_2O混合粉末インサート材の使用は有効であるといえる。
|